建築家やインテリアデザイナーのなかにはひと目で「この人が設計した」とわかるような作家性をもった人もいますが、imaはそうではありません。彼らのデザインは一言でいうと多種多様。アウトプットの幅の広さこそが魅力です。でも、それがかえってimaという存在をわかりづらくしているかもしれません。
一方、あらためて彼らが手掛けてきた空間を眺めてみると、そこにはimaらしい何かを感じとることができます。多彩なデザインの中に個性が宿っているのです。この連載ではimaの二人とデザインについて話し「imaらしさ」やその源泉を探り、彼らの個性に迫りたいと思います。
第2回はコンセプトがデザインに落とし込まれるプロセスについてお話しします。
※聞き手は企画・編集を担当する私たちHiの永井と古山です。
2 デザインは“往復運動”だ ?
わかりやすくいうと、僕たちがデザインするのは大きく分けて3つです。1つ目は前回お話したコンセプト、2つ目は機能、そして3つ目が表層です。ただし3つのデザインは相互につながっています。
コンセプトという抽象的なものから機能や表層という具体的なものに落とし込むのですが、その後、再びコンセプトに戻って見直しをします。そしてまた、そこからデザインを広げる、というふうに往復を繰り返します。コンセプトと機能と表層は等価でつながっていて、ぐるぐると行き来するイメージです。
たとえば「新潟伊勢丹」のリニューアルでは「–家のような居心地の良い空間– ソーシャルホームデパートメントストア」というコンセプトがあり、各フロアの中心に「サークル」と名付けた象徴的なスペースを作ることになったんです。
1階は地元の人気コーヒー店やポップアップストア、2階はZ世代へ向けたセミセルフのコスメ売り場と、さまざまな購買体験を提供する場を縦方向につなげることで、集客の向上を目指しました。
そうした背景から、空間のデザインには意識的にサークル(円形)のモチーフを用いることにしました。同時にこのサークルには「道しるべ」としての機能も持たせています。百貨店のような広い空間では「この円形の天井のエリアからフロアを周ろう」とか「エレベーター前の丸い床で待ち合わせしよう」とか、円形が直感的に使える目印になるからです。
——自分の位置が認知できればフロアを周りやすいし、結果的に居心地も良くなる。これは機能ということですね。コンセプトと機能のデザインがつながっているのが分かります。素材や色はどのようにつながるのでしょう?
事前リサーチで、寒く雪が多い新潟に住む人は家で過ごす時間が好きで、明るく温かみのある色を好むことを知りました。「マリメッコ」が生まれたフィンランドに似ていますよね。それを意識して、ポップで温かなイメージの色を選びました。
1階の床はインクジェットプリントのカーペットなのですが、伊勢丹チェックを再構築したデザインにしました。加えて、家のような居心地の良い場所を作り出すためには木やレザーという温かみのある素材が適していると考えました。
「新潟伊勢丹」のコモンエリアは、「ソーシャルホームデパートメントストア」というリニューアルコンセプトのもと、空間全体をデザイン。象徴的に円形のモチーフを用いると同時に、明るくポップな色彩で、優しく楽しいインテリアを作り出した Photo by Nacasa & Partners Inc.
——温かみを感じさせるという機能を果たすよう、色と素材を選定されたということですか?
はい。コンセプトと機能、表層のデザインの3者でキャッチボールをしている感覚です。どのプロジェクトも、そうした“クリエーションの往復運動”を行うことで空間が出来上がります。このプロセスを経ると、作品性のような通り一遍の答えではなくて、お題によってオリジナルな答えが出てくるんです。
表層のデザインは多様ですが、プロセスは変わらずひとつ。だからどんなお仕事でも、どんな個性的なクライアントさんでも、あまり困ったことがないんです。
クライアントさんによって最適な答えを出すのが、この仕事の醍醐味だと思っています。そのためには、日常の興味関心の幅広さや観察力が大事ですね。僕らも普段から意識していろんなものを見ています。
ちなみに、スタッフにデザイン案を出してもらう際には、3案準備するように伝えています。1つ目はクライアントの要望を正しく落とし込んだ案。2つ目はimaとしての案。3つ目は自分自身の案。
——おもしろいですね。その3つ、実は発想法がまったく違いますよね。
そうなんです。要望を汲んで収束させるのと、自分の発想を広げていくのに、同時に取り組むのはなかなか難しいことです。
これって、千利休が提唱した「守破離」なんですよね。なかには、いきなり離を出してくるスタッフもいて、まずは守を作ってみてと伝えています(笑)。守と破があってはじめて、クライアントは離を見てくれますから。
——コンセプト、機能、表層を往復するということは、一度作ったものを壊して、また作るということですよね。大変ではありませんか?
僕ら、それが好きなんです(笑)。ですが、その3つが同時進行で決まって、往復運動をせずとも一瞬でできあがるプロジェクトもあるんですよ。それが、2015年に担当した国際見本市「インテリアライフスタイル」のアトリウムの会場構成です。
「キュレーションストア」という全体テーマがあったので、“キュレーション”という言葉から「つなぎ合わせる+プラス」という空間コンセプトを立て、会場の対角線上に十字型の動線を作り、その上に出店者のイチ押しの製品が並ぶテーブル兼ゲートを配しました。
2015年に東京ビッグサイトで開催された「interiorlifestyle TOKYO」。展示会場のデザインでは“ワクワク感”を意識している Photo by Nacasa & Partners Inc.
それ以前は、会場の壁に対して平行に動線とブースが並ぶ会場構成が大半だったんですが、実は入口が角にあり、入口から対角線上に動線を伸ばすのが自然だと考えました。動線とキュレーションは目立つ黄色、出店者ブースは白と、色も端的に表現できました。
コンセプト、機能、表層の3つが一瞬で重なり、短期間で完成したからこそ明快なデザインができました。主催者をはじめたくさんの方から評価をいただいた案件です。これ以降、この形式の会場レイアウトが増えたようです。5年ほどディレクターも担当させてもらいました。
そういう意味では、imaの集大成的なプロジェクトです。色使いや形状、山野英之さんのグラフィックデザイン、全体の雰囲気を含めて高揚感があるハッピーな会場構成になったと思っています。
——そういったケースはまれなことですか?
時々、ありますよ。一保堂茶舗のポップアップカフェ「ひやかし ippodo tea」も、掛け合いのような感じで決まっていきました。
表参道でポップアップをやりたいけど、どうやったら面白いお店ができるかと、ディレクターさんと現場を見ながら相談していたんですね。そうしたらディレクターさんが、「ぱっと寄って、ぱっと飲んで、ひやかしに来てもらいたいんですよね」とおっしゃって。「“ひやかし”なら、真夏だし、冷えた菓子と抹茶がいいんじゃないですか?」「それ、いいですね!」って。大枠が決まっていったんです(笑)。
「ひやかし ippodo tea」は、東京・表参道に2024年の4月から9月の期間限定でオープンした一保堂茶舗のポップアップカフェ。サステナブルな素材、竹を用いた家具をデザインした Photo by SADAHO NAITO
家具やインテリアには竹を多用しているのですが、それもすぐに賛同していただけました。ポップアップストアを手掛ける際にはいつも、なるべくサステナブルな素材を使うよう心がけていて、成長が早い竹は比較的環境に優しいとされているので、いつか機会があれば使いたいと考えていたんです。嵯峨野など美しい竹林が京都にはあり、抹茶の色は竹の色にも似ている、それに茶筅は竹でできている。一保堂茶舗さんとの親和性もあったんです。
——店名までその場で決まったんですね! コンセプトから考えるimaだからこそできることのように思います。
(つづきます)
PHOTO:高木康行(ポートレート)
EDIT&TEXT:Hi 永井史威、古山京子
業務に関するお問い合わせについて
初期のご相談や物件視察等についての費用は、無料でご相談いただけます。こちらから遠隔地へ出向く場合は、交通宿泊費のみ実費ご負担いただきます。実現したい内容・場所・時期・ご予算など、お気軽にお問い合わせください。
——前回はコンセプトづくりのお話をお聞きしました。今回はコンセプトが固まった後、どんなふうに空間をデザインしていくか、もう少しお伺いしたいと思います。